なぜ大学の郊外移転は失敗したのか
大学入試の合格発表の報告が相次いでますね。
いやー今年の受験生は国から
「東京都心の大学は合格者を減らすように!」
という行政指導があったので大変だったね。
なんでこんな行政指導をしているかというと
最近、郊外の方にあった大学が都心回帰する傾向にあるので
東京一極集中を防ぎたい日本政府はこれに危機感を覚えて
都心に来る大学生を減らそうとしてる、という流れ
【日本の議論】「明治」「理科」「同志社」「立命」…都心に回帰する大学次々の背景(1/3ページ) - 産経ニュース
そもそもなんで郊外に行った大学が都心に戻ってきてるかというと
ぶっちゃけ大学の郊外移転は大失敗して
都心に戻らざるを得ないという状況。
(30年前くらいに国が郊外移転を促したんだけど)
この失敗の原因を大手メディアは
- 学生にとって都心だと就活に有利
- 学生にとって都心だとアルバイトする場所が多い
- 学生にとって都心だと遊ぶところが多い
みたいにあたかも
「学生が都心に行きたくてしょうがない」
のような論説が多いが、私はこれはメインの原因ではないと思う。
というか最近、都心回帰した東京理科大学の学部とか別に受験者数増えてないんだよね。
ではメインの原因何なのか?
ズバリ「非常勤教員の確保」が原因だと私は思う。
そう思う材料を以下の点で説明する。
1:現在の大学の運営
大学の教員には、
・大学に正規に属する専任教員
・授業を行うためだけに雇われている非常勤教員
という大きく2種類いる。
正社員と非正規社員みたいなもんね。
今、大学の全教員の非常勤の割合がどれくらいかというと
半分を超えている。
ちなみに文系だともっと多い。(7割くらい)
なんでこんなに非常勤が多いのか。
それは非正規社員が増えてるのと同じで
「ぶっちゃけ大学にお金がない!」
からだ。
大学法人化により
日本政府「大学は自分でお金稼いでね☆」
という状態になり
補助金に依存する割合は減少傾向にある。
しかし、ほとんどの大学は火の車。
大学「企業をうまくスポンサーにできないし、」
大学「授業料とか受験料も少子化で減少傾向にあるし」
大学「どないしよ…」大学「せや!人件費減らそう!!!」
うーん、失われた20年のテンプレコース。
こんな感じで専任教員の数を減らし、非常勤の割合を増やしていった。
(専任も数が減ったので負担が増大。任期つきの常任も増えた。)
しかしなぜそれが大学の都心回帰と関係あるのか。
まず非常勤教員がどんな働き方をしているか見てみよう。
2:非常勤教員の種類
非常勤教員と言って実際は様々なタイプがいるが
大きく3つに大別される。
- 他大学の専任教員
- 企業からの嘱託
- 職なし非常勤教員
・他の大学の専任教員
他の大学の教授などが
大学間の連携などで講義だけ行う場合がある。
有名な先生だったり、単にニーズの問題だったり。
この人たちはある意味、大学の正社員なので
他大学に出張してるようなもんである。
・企業からの嘱託
最近は企業・保護者から
「社会に出てから役に立つ教育」
を大学は求められている。
個人的には「そんなすぐ陳腐化しそうな知識つけても…」と思うが…
そうなると非常勤教員にもっとも適任なのは
現役で企業で働いているサラリーマンになる。
ある意味、産学連携って奴ね。
サラリーマンからすると半日出張して講師する感じ。
まぁ営業でプレゼンするようなもんね。
・職なし非常勤教員
今回の主役。
要はどこの大学でもポストがなくて
大学での非常勤での授業料で生活してる人。
1コマの講義でだいたい2万円くらいで
だいたい週3コマくらいが平均。
(3つの大学で1コマずつという人が多い。)
つまり月収25万くらい。
平均年収は330万。
ワープアやんけ。
www.j-cast.com
そしてこの3種類の登場人物、
実は全員
「大学は都心に密集したほうが良い」
と思っている。
3:郊外移転が非常勤教員の確保を困難に
なぜ非常勤教員たちは大学(職場)が都心になると良いのか。
・他大学の専任教員とサラリーマンの場合
この人たちの理由はシンプルである。
教員の元々の雇用者である会社や大学からすると
移動時間が長ければ長いほど経済的損失である。
朝から6時間新幹線乗って目的地に到着後に2時間しか仕事しなくても
8時間仕事したことになるやん。
(イマドキそんな良心的な措置とってくれる企業も少ないが)
郊外の大学に行かれると終日それに拘束されるが
都内の大学だったら、半日出張で済む。
リーズナブルやん!
Skypeとかネットごしで講義すれば良くね?
とか思うが、
それが通用するんだったら、こんなに企業が都心に密集してないっしょ。
・職なし非常勤教員の場合
さっきも言ったが、
この人たちは講義の授業料だけで生きている。
ということは1日1コマよりも
1日2コマ、3コマのほうが効率的に稼げる。
また、この人たちは1つの大学で3コマ持っているわけではなく
たいてい複数大学の講義を掛け持ちしている。
しかし郊外の大学の場合、行って都心に帰ってくるだけで1日浪費してしまう。
更にたいてい交通費は自腹である。
こうなると最適な行動は
「大学が密集している都心で講義する」
となり、効率的。
交通費も少なくて済むし、1日2コマ、3コマ入れられる。
・そして大学は都心に回帰する
こういう風に非常勤教員、またはそれを志望する人たちにとって
郊外の大学は職場として選択肢に上がりづらい。
来る教員の分母が減るので
求人をしても人が殺到する都心の大学と違い
なかなか良い人材が集まらない。
そうなると
非常勤教員が集まらない
↓
専任の負担も増える
↓
教育の質が低下
↓
学生が来なくなる
↓
大学の収支が悪化
という負のループ。
このループを打ち破るのにはどうすればいいのか。
せや!都心回帰や!
これが今の流れ。
つまり主な都心回帰の原因は非正規雇用の拡大。
4:考えられる解決策
この問題、実は日本だけではなくアメリカなどでも局所的に起きている。
街の中心部に非常勤が集まる現象はとても良く似ている。
どこも高等教育を受けた人間の受け皿になれるだけの雇用がなく、
大学や企業でのポストを獲得できなかった博士号を持つ人たちが
講義の授業料で食いつないでいる状態。
しかし、日本は特に専任と非常勤の賃金差が激しく2,3倍ある。
(国連でも懸念を示されたこともある。)
これを解消するのが政府の推進する「同一労働同一賃金」だったのかもしれないが
そもそも専任と非常勤は仕事同じじゃない!という反論も多い。
都心回帰を止める手段…
実はないのでは…
うーん。どこかに非常勤の給与に当てれる
5000億円くらいの金があれば…。
日本政府「高齢者を大学に行かすために5000億円つかいまーす☆」