痩せるコーラ

自分が考えている事をまとめます。毎週木曜21時更新(予定)

なぜキラキラネームが生まれたのか

4月ですね。新年度ですね。
新年度と言えば、入学や就職・転職等で環境が変わった人が多いと思う。

で、こういう時に毎回話題になるのが
「名簿渡されたんだけど、最近の子供の名前読まねぇよ。なんて読むんだよ」
という話。

例えば
天響(てぃな)
緑輝(さふぁいあ)
火星(まあず)
とか。

響け!ユーフォニアム 1 [Blu-ray]
マーズってすげぇな。マルスと同義語で軍神だぜ。

毎年出している明治安田生命の命名ランキング曰く今の人気の名前はこれらしい。

男子 1位:蓮  2位:大翔 3位:陽向

女子 1位:陽菜 2位:凛  3位:結菜

まぁ意外と普通だよね。

男がレンで女がリンとかボーカロイドかな?って感じだけど。

初音ミクGraphics Character Collection CV02  鏡音リン・レンedition
でこういう話題になると毎回発生するのが
「日本人伝統の名前に反している」
とかいうオッサン。
自分の名前くらいしか誇りがないんだね。かわいそうだね。

逆に古臭い名前はシワシワネームとか言われ始めてるしカオスだね。

news.livedoor.com


じゃあ日本人伝統の名前って何?
近代らへんを纏めてみた。

 

坂本龍馬は本名じゃない。

明治以前は2種類名前を持っていた。
諱(いみな)と通名である。

例えば「坂本龍馬」。
知らない人は殆どいないと思う。
で、この坂本龍馬、実は本名じゃない。

本名は「坂本直柔」って言う。
じゃあ龍馬って何なの?っていうと「通名」。
要は、あだ名である。

図説坂本龍馬

坂本直柔さん(アダ名:龍馬)

明治以前は武士・公家階級には一般に名前が二つあった。
これが諱(いみな)と通名である。
諱(いみな)っていうのは本名とイコールと思ってくれて良い。
昔は本名を呼んで良いのは親しい家族だけという決まりだった。
だから親しい親族以外が呼びやすいように「通名」を用意していたのである。

なので大河ドラマ平清盛」でライバルの源義朝
「おい!清盛!」
と呼んでいたが清盛は本名なので通名か役職で呼ばないと本来おかしい。
まぁドラマだからしょうがない。

女性にも適用されていて清少納言紫式部の名前がわからないのはこれが原因である。

使い方は例えば
野球選手の松井秀喜アメリカだと「ヒデキ・ゴジラ・マツイ」とアナウンスされてた。
ゴジラは愛称である。
これを「秀喜」が親族以外呼んじゃいけない諱。
ゴジラ」を通名とすると、
坂本龍馬のように標記すると「松井ゴジラ」になる。
則巻ガジラ的な何か。

松井秀喜は名監督になれるのか-名将から学ぶリーダーの素養とその分析


でこの制度、今はなぜないかというと
「明治時代に戸籍作った際に廃止したから」
である。

要は
「諱(いみな)か通名かどちらか一方しか戸籍に載せられない。どっちか選べ。ちなみに選んだほうが本名になる。」
と言ったもの。

なので

伊藤博文(通称:俊輔)→伊藤博文(諱(いみな)を採用)
板垣正形(通称:退助)→板垣退助(通名を採用)
井上惟精(通称:聞多)→井上馨(その時作った。フリーダム)

の3種類に分かれた。

ここで生まれた過激派が「宮武外骨(がいこつ)」である。

宮武外骨伝 (河出文庫)

明治以前の命名法

明治以前はどうやってつけてたかというと

  • 家代々の漢字一文字+漢字一文字の漢字二文字
  • 読みは絶対に訓読み

といった感じ。
徳川将軍に家康、家光、家綱とか「家+○」が多いのは
「家」が徳川家宗家の嫡子が付ける漢字だからである。
音読みは駄目だから家大(イエダイ)などはできなかった。

一方通名は親がつけても良いし、自分自身が勝手に名乗ってもよかった。
しかも後からどんどん変えても良かった。
要はテキト―ルールである。
音読み、訓読みもどっちでも良し。
だいたいは○郎とか○助(輔)、○兵衛であった。(小五郎、太助、尚平etc...)
後は生まれた順で○太、○次等。(聞太、平次etc..)

夏目漱石の本名の夏目金之助とかもこれに沿っている。
龍馬は当時としては大仰な通名である。

つまり今の「親が自由なルールで名前をつけてそれが一生の名前になる」という制度は明治時代から始まったものになる。
130,40年程度の歴史でしかない事になる。4,5世代前程度である。

夏目漱石全集

明治以後の命名法

自由になったので
明治以後の命名ルールが解禁された。
それでも以下の名前の傾向があった。

  • 先祖代々の漢字があったらちゃんと使う
  • 通名でOKだったから音読みも使い始める
  • 漢字二文字が多い。

こんな時代に生まれたのが
広田弘毅東条英機、等の「訓読み+音読み」の戦中メンツである。
東条英機も嫡子は「英」の字をつけると決めてられたらしい。(父は英教)
「ヒデキ」とか今もいっぱいいるけど戦国時代とかにいないのはそういうわけ。

つまり

父親「ウチは代々、「龍」って時が伝わってるから「龍喜(たつき)」にしよう」

母親「ジャストアイディア!」

って感じ。

また女性も明治以前は花や動物などを名前を持った人が多かった。
菊、梅、鷹などである。
これを皇族の子女っぽく「○+子」にして命名し始めた。
(例えば和宮の本名は「親子(ちかこ)」という。)
それで菊子、梅子、鷹子などになった。
この流れは最初は華族で流行ったが昭和には一般庶民まで広がる事になる。

つまりここで一旦、それまで命名の伝統が破壊されたことになる。
実は我々が古めかしくて伝統がある名前だと思ってた名前は明治から生まれた名前という事になる。
ここで生まれた過激勢が「山本五十六」である。

父 山本五十六 (朝日文庫)

昭和の命名法

昭和つまり我々の祖父母、父母世代になっても新たなブームが生まれた。
それは

  • 男性の名前で漢字一文字
  • 女性の名前は「○+美」

という事である。
清、学、誠、明美、直美、由美など。
明治生まれにも漢字一文字は吉田茂芦田均等がいたが本格的に流行り始めたのはこのへんからである。

この時の命名の傾向として
「まず漢字ありき」
という事がある。

つまり

父親「この漢字使いてぇな。子供につけるわ」

母親「ジャストアイディア!」

という傾向。

この「使いたい漢字」だいたい決まってた。
それは元号や皇族や有名人から一字拝借する事が多かったのだ。

だから昭和初めは「昭」が多いし、「和子」も多かった。
浩宮さま(皇太子殿下)が生まれた時も「浩」や「浩美」が多かったのである。
不良漫画が流行った時に生まれた子供に「翔」や「翔子」が多かった。

なので中畑清や桜井翔や増田明美とかは古めかしい名前のように感じるが
実はその時のブームに乗っかっただけの名前である。

ここで2度目の命名法の伝統破壊が起きた事になる。
ここでの過激勢が「天使」君や「悪魔」ちゃんである。

 

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平成の命名法

平成に入ってここからキラキラネームの登場である。
この時代からの命名の傾向は
「まず『読み』ありき」
という事。

具体的には

父親「ヒロトって名前にしたいな。お!ググったら大翔(ヒロト)っていうのが良さそうじゃん。これにしよ」

母親「ジャストアイディア!」

って感じ。


こうなった原因としては

  • PC、スマホの登場で読み方に合った漢字を調べやすくなった
  • 字画等もすぐにわかる為、色々な漢字を組み合わせて良い字画を目指すようになった

と言ったところだろう。

つまりIT革命により命名の伝統の破壊の3度目がここで行われた事になる。

平成からの最大の特徴としては
今まであった漢字というレギュレーションが弱くなった事
だと思われる。

要は読みの比重が高まりすぎて、漢字は添え物になったのだ。
こうしてカッコイイ読みを追求した結果、過激勢がつけたのが
「皇帝(カイザー)」君とかである。

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まとめ

まとめると

  • 伝統的命名法は過去3回破壊されている
  • 最近は読み重視で漢字は後から付けるので読みづらくなった
  • 一部過激勢が特段変な名前つけてる

ってとこ。

つまり、一部過激な名前を取り上げて大騒ぎしてるだけで
名前も日本語の変遷みたいにゆっくりと変わってるだけと言える。

「大翔とかキラキラネームじゃんw」
とバカにしてるあなたの名前ももしかしたら、流行りに乗っかっただけの名前かもしれない。

苗字と名前の歴史 (歴史文化ライブラリー)